かみむすび(35)祖先の魂
祖先の魂は夏の暑い夜に私を訪ねてくる。
私はその魂に懐かしいぬくもりと優しいまなざしを感じる。
ただ、その魂は冷たい悲しさも隠し持っている。
魂は私に何かを語りかけるが、私は聞き取れずにいる。
その魂はとても古い時から私を運んできた。
私のことをずっと昔から知っていて、それが物悲しい影を引きずっていた。
魂は抗いようのない深い溝に沿って流れてきた。
その溝から見える景色は極彩色の花畑で、それで心を癒やしてきたのだ。
祖先の魂が語る言葉は夜風に砕かれて、森のざわめきの中に消えていく。
私は目を閉じてざわめきの中に跡を追ってそれをつかもうとした。
そうして私は祖先の言葉が告げようとした深い青に広がる世界へ落ちていった。
最も古い祖先の魂は世界の最も深い場所から私を見つめていた。
そこはすべてが止まっていて、あの魂を運ぶ流れさえもなかった。
花畑は古い写真にように色褪せて、私はそこを突き抜けて沈んでいった。
私はその魂の目に吸い寄せられて、そしてそれに触れたのだ。
その瞬間、私はすべての祖先とひとつになり、すべての祖先になった。
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