かみむすび(34)炎の言葉
私は暗闇の中で燃える薪の炎を黙って見つめていた。
炎がパチパチと弾けながら私に尋ねた、何を思い悩んでいるんだい。
何も思い悩んでいるわけではないさ、私は困った笑顔でそう答えた。
思い悩むのは悪いことではないよ、炎は私を見透かしたように言った。
ああ、自分が誰か分からないでいるだけだよ、私は少し苛立って言った。
それなら僕は何かの役に立つかもな、炎はそう言ってまたパチンと弾けた。
なんの役に立つというんだ、私は炎の回りくどい言い方に腹がたった。
僕がどうなるのか見ていればいい、それだけだよ、炎は静かな口調で言った。
わたしたちはそこで黙った。
薪は燃え続けて、やがて炎は何度も弾けながら小さくなって消えた。
暗闇だけがそこに残った。
私はそのまま暗闇の中で黙って座っていた。
ほら、僕たちはひとつになった、炎の声が暗闇に響いた。
僕は消えたけど、君の中に炎は残っている。
君が僕を存在させてくれたんだよ。
そしてまた僕をこの世界に存在させてくれるんだ。
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