最後の教えはあの夜に語られた(15)
時の女王デュケの門もなく、私たちはすんなりと街に着いた。
私はまだ人気のない早朝の広場で馬車を降りた。
娘たちは片手を上げて私に微笑むと、館への道を戻っていった。
広場は朝日に照らされ、人々の目覚めの音が心地よく響き始めた。
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あの部屋で見た光の世界がこれから始まるのだ。
私にとって、この朝は特別なものだった。
私は昨日までの私ではないのだ。
私は自分が「在る」だと知っている。
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私は人間らしく呼吸をして歩いていたが、何もしない「在る」だった。
この朝の空気も「在る」だった。
道をゆく人々も空を飛ぶ鳥も「在る」だった。
私はすべての中に「在る」を見ていた。
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だが、分からないこともあった。
目に見えない「在る」が、どうして目に見える「在る」になるのか。
そんな分からないことがあることも、私にとっては喜びだった。
答えがすでに与えられていて、私はそれに気づけばいいだけなのだ。
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私は「在る」をよく確かめて理解しなければならない。
それは夜の館の女王の言った通りだ。
もう二度と夜の館の女王に会うことはないだろう。
「在る」についてはすべて語られたのだ。
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私はあの部屋で「在る」を知った。
私は言葉だけでなく、実際にいまも「在る」を知っている。
これ以上のことがあるだろうか。
教えられることは終わったのだ。
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