最後の教えはあの夜に語られた(14)
遠くに小さな灯火が見えた。
それは次第に明るくなり、部屋を照らしているロウソクの炎だとわかった。
はっとして私は自分が夜の館にいることを思い出した。
見回すと橙色の灯火が部屋の四隅まで照らしていた。
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扉の前にあの二人の娘が立っていた。
ロウソクの光に照らされて二人は微笑んでいるようにも見えた。
「さあ、先生、帰りますよ」
そう静かに言うと、私を扉の方へと誘った。
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私はゆっくりと立ち上がると、黙って娘たちの後に続いた。
いったいどのくらいこの部屋で過ごしていたのだろうか。
私は夜の館の中を歩きながら、自分が「在る」でいることに気づいた。
それは静かで力強く明晰だった。
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これだけは、この部屋に入る前の私とは明らかに違っていることだった。
私は女王の「在る」についての話を思い出した。
そして、いま「在る」がなぜ真実と言われているのか分かった気がした。
「在る」だけが唯一の真実であり、それは実際にそう理解できることなのだ。
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私は玄関に止まっている馬車を見つけた。
娘たちが馬車の扉を開け、私は中へと乗り込んだ。
「女王はいないのかね」
私は娘たちに尋ねた。
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娘たちは顔を見合わせて、困った顔で私を見た。
「女王なんて、ここにはいませんよ」
そう言うと、何事もなかったように馬車をゆっくりと動かした。
私はそうだったかもしれないと心の中でつぶやいた。
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私たちは帰り道で夜明けを迎えた。
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