かみむすび(30)踊る預言者
人生をどう生きるのかと預言者は私に尋ねた。
私はどのように人生を生きるのかを考えた。
私は自分の生き方の本を丹念に書き上げていった。
そして実際に私の生き方を世界に描いてきたのだ。
だが、それが何だというのだろうか。
それは夏の陽炎に過ぎない。
時が過ぎ去る間に波しぶきを浴びている海鳥の瞳。
そうして虚しさを友とて生きていく世界に私はいた。
私が本当の自分に目覚めたとき、私は世界の源に立っていた。
そこで私は世界の存在を支えていたのだ。
世界は美しく流れていて、私はそこで自由に舞っていた。
預言者はそんな私の姿に戸惑って、声を失ってしまった。
私は笑いながら預言者の手を取って一緒に踊ろうとした。
そのとき預言者は大事に抱えていた厚い本を谷底に落としてしまった。
その途端に手が軽くなり、預言者は思わず空に触れたのだ。
預言者は透明な青い風になり、踊りながら源に消えて私になった。
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