かみむすび(29)探すべきもの
私はこの世界で何かを探していた。
だが、何を探すべきかを知らなかった。
何を探すべきかを知らせる声が幾つも届いた。
声に導かれて何かを見つけたが、それが探すべきものなのか分からなかった。
探すべきものは幾つもあったので、私はそれを丹念に探し続けた。
探してはそれを見つけ、次々に私の中に詰め込んでいった。
そうして私は見つけたものでいっぱいになった。
それでもそれが探すべきものだったのか分からなかった。
途方に暮れた私は寝転んで空を見上げた。
急かされるように探しものをしてきたが、無駄なことのような気がした。
耳元で小さな蟻が預言者のように囁いた。
空はいつも空であって、その空でいればいいのだ。
私は扉を開けて見つけたものを蟻たちに運ばせた。
そうして空っぽの私になったとき、そこに眠っている私見つけた。
これが探すべきものだったとすぐに分かった。
そこで私は眠りから覚めて、はじめて大きく息を吸った。
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