かみむすび(27)神の目
白い衣の巫女たちがささやくように歌う月夜。
神は天空の闇から静かに地上を見つめていた。
時ばかり追い求めていた私はそんな神の目を知ることもなかった。
目を閉じて柔らかな時の手に触れていれば安心だったのだ。
あどけない瞳はその手に引かれて何処に行くのか。
神の目はいつでもそんな私を見つめていたというのに。
私は記憶を積み重ね過ぎて、その神の目を見失っていた。
この失敗は私を洞窟で眠らせるのに十分だった。
私はその失敗をどう挽回すればいいかも分からなかった。
失敗だけを背負って投光機に照らされたおぼろげな世界を練り歩いていた。
大勢の人たちが同じ方向に私とともに歩いている。
小魚の群れのように、子羊たちのその日暮らしのように。
明日起こることは時の地平線に隠れている。
それでも神の目だけはいつでもそこにある。
私の失敗など蟻の涙ほどのことだと巫女たちが歌っていた。
私が洞窟で目覚めたとき、神の目は笑って夜風を届けた。
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