最後の教えはあの夜に語られた(8)
『在る』はすべての起源であり、帰結点でもあります。
余計なものが一切ない完全な純粋性であり、
それでいてすべての可能性が未発現の状態で内包されています。
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すべては『在る』でつくられているため、
『在る』はこの世界よりも大きなものになります。
どんなに小さな物質にも宿っているため、
『在る』は最も小さなものになります。
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『在る』は時間の経過にまったく影響を受けません。
時間すらも『在る』でつくられているからです。
『在る』には時間や大きさといったこの世界の理論がまったく通用しないということです。
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『在る』はこの世界をつくっている唯一の要素でありながら、この世界の法則を超えています。
ですから、『在る』をこの世界の常識で説明しようとしても無理なことになります。
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これが『在る』であり、あなた自身の本質でもあります。
自分とは誰なのかを知るとすれば、この『在る』を知ることになります。
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その他の自分はすべて偽りであり、あなたの信頼に耐えるものではありません。
もちろん、このことは自分自身で確かめることができます」
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女王はそう語ると、私を見て微笑んだ。
そして私を館の中へと誘った。
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館の中は暗く、壁の所々にロウソクの火が灯されていた。
ロウソクの灯火がないところは黒い影で塗りつぶされていた。
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ここは夜の館だ。
ずっと夜でしかないのだ。
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女王はひとつの部屋の前で立ち止まり、その扉を開けて私に入るように促した。
その部屋にはロウソクが一本だけ灯っていた。
その他には何も見当たらない。
ほのかなロウソクの光が部屋の壁を橙色に染めていた。
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「ここであなたに私が語った『在る』を直接知っていただきます」
女王はそう私に言うと、部屋の真ん中へと私を導いた。
そしてロウソクの火を吹き消した。
部屋はたちまち完全な闇になり、何も見えなくなった。
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扉が閉まる音がして、女王が部屋から出ていったのを感じた。
私は部屋にひとり取り残された。
私はゆっくりと手探りでその場に座った。
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