かみむすび(24)旅の理由
私が暗闇で目覚めたとき、時がはじまった。
時の流れを感じながらも、私は自覚に触れていた。
それは現実であり、夢や幻想ではなかった。
私は確かに存在していたのだ。
存在していたのは私だけだった。
暗闇と無音、加速して流れていく時間。
突如として私は自分が誰かを知りたくなった。
それを知らなければ目覚めた意味を失うと思った。
私は息を吐いて自分を引き伸ばした。
それは時の流れに乗って無数に枝分かれしていった。
私は全世界に自分を張り巡らせた。
そうすれば自分が誰だか分かる気がしたのだ。
気がつけば、私は世界の中にひとりで立っていた。
その世界を見回しながら、そこにいる誰かを見つけた。
そのたびに、それが自分であることを祈った。
そうして私はずっと世界を旅しているのだ。
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