かみむすび(23)地上の翼
私は空高く飛び続けていた。
そびえ立つ山をも超えて、休むことなく飛んでいる。
いつになったら休むことができるのかも分からない。
そして飛ぶことに疲れてもいるのだ。
私は飛ばなければならないという思いだけで飛んでいる。
そうしなければ、地へと落ちていくだけだ。
疲れ果てて落ちていく者は多かった。
みんな眠るようにして翼を止めて地上の何処かに落ちていく。
地上に落ちることは夢の中に戻ることだ。
夢の中に戻れば、飛ぶことはできず、あの感覚は眠らされる。
そして安楽の中で悩みの黒い塊を抱えて砂漠をさまよい続けるのだ。
強靭な翼はやせ細り、自分が飛べることさえ忘れてしまう。
私は自分の翼を信じて飛び続けるしかない。
もう、あの夢には戻りたくないのだ。
空が手を伸ばして私をつかもうとしている。
そうして空に抱かれたなら、私は翼を地上に残すのだ。
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