風の巡礼(3)風の強い日
雨の匂いを含んだ風が強く吹く日だった。
幾つものちぎれ雲が追い立てられるように流れていった。
大地に生きる者たちは強い風に煽られて何度も空へさらわれそうになった。
風が強すぎて何を残せるか分からなかった。
強い風はすべてを空に引き上げようとした。
大地に根を張る者たちはそれに負けまいと抵抗した。
だが、本当は空に憧れてもいたのだ。
いつか空から大地を見下ろしてみたいと思っていた。
力ない者たちは空へと吸い上げられていった。
大地は惜しげもなくその者たちを手放した。
その者たちは風に乗って天高く飛び去った。
古い憧れが呼び覚まされて、その喜びは小さな雲になった。
風の日に空へと飛び立った者たちは、また大地に戻ってきた。
ほとんどの者が以前の大地に戻って再び根を張った。
わずかに天を居とする者もいた。
その者たちは青に染まり空に根を張った。
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