最後の教えはあの夜に語られた(2)
道の前方に巨大な門が現れた。
馬車はその門の前で止まった。
道はそこで行く手を塞がれていた。
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巨大な石が幾層にも積み上がった塀があり、丸太でできた重厚な扉が閉まっている。
扉には黒光りする鉄の縁取りがされていて、まるで動きそうもない蝶番で石塀に固定されていた。
ここは時の女神デュケが治めている光と闇の門だ。
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「女神デュケよ、我々は夜の館の使いのものだ。門を開けるようにお願いする」
娘は扉に向かって大声でそう言った。
しばらく待ったが、扉が動く気配はなかった。
何の返事もなく、静まり返っている。
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光と闇の門はそう簡単に開くものではない。
ここは昼と夜の時間を司る神聖な場所なのだ。
誰でも簡単に通れる門ではない。
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「偉大なる時の女王デュケよ、どうか扉を開けて欲しい。
我々は夜の館に客人を送り届けなければならない。
これは我らが主人である館の女王から言い渡された使命なのだ」
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「寛大で深い洞察に通じる女王デュケにこの門を開けてくれるようお願いする。
これは夜の館の女王だけでなく世界の望みでもあるのだ。
我々はこの時に於いて、やるべきことを成し遂げなければならない」
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「もし門を開けてくれたなら、世界は永遠にこの門を高貴で知徳のあるあなたに委ねるだろう。
至るところから賛辞と感謝が届けられ、さらにこの門には栄光が降り注がれる。
女神デュケに世界を担っている誇りがあるのなら、我らにこの使命を果たさせて欲しい」
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娘たちは深い敬意を込めて女神デュケにそう語りかけた。
扉から重い鉄と鉄をぶつけたような轟音が響いた。
地響きのような音を立てながら、ゆっくりと重厚な扉が開き始めた。
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その先には夜の館への道が続いていた。
巨大な門を確かめるようにゆっくりと通り抜けると、また娘たちは馬を飛ばした。
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