風の巡礼(2)初夏の太陽
私が空の眼差しに気づいたとき太陽は雲間にいた。
雲間から太陽の手が大地に触れて、大地はそれを握りしめた。
それで大地は慰められて美しい色彩を太陽に返した。
太陽は空を駆けながらそれを眺めて微笑んでいた。
空の眼差しが誰なのかは分からなかった。
私が空を見上げるのは、その眼差しを感じるから。
いつも私はそうして誰かを空に探すのだ。
そして、いつも誰かが分からずじまいだ。
大地も空の眼差しを感じていた。
だから花も木も空へと顔を向けて手をのばすのだ。
そこには誰もいなくて、届かないその手を風がもてあそぶだけ。
ときおり太陽の手がそんな大地を包み込んで慰める。
初夏の太陽は何も知らないように微笑んでいるだけだ。
私はその手が私や大地に触れていることを感じている。
誰か分からない空の眼差しはいつでもそこにある。
それがなくなることなど一度もなかった。
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