かみむすび(19)絶望の底から
私が世界に立ち向かうにはあまりにも非力で弱すぎた。
荒れ狂う嵐の海に小石で立ち向かおうとしていたのだ。
私はいつもなす術もなく世界に飲み込まれていった。
そして絶望の底に沈んで眠らされたのだ。
私は眠っているように世界で生かされた。
眠っていれば、世界は私に優しかった。
私は世界の優しさに抵抗することができなかった。
抵抗する理由さえも失って、そこで笑っていたのだ。
海の彼方に沸き立つ入道雲が語りかける。
いつまでそこで眠っているのかと。
だが目覚めようとしても、それを世界は許さないのだ。
世界は私を絶望の底に縛り付けている。
ある夏の夜に、私は海の底で目覚めた。
海の底から海面の光を目指してまっしぐらに泳いだ。
海面に出ると大きく息をして、さらに夜空へと飛び立った。
空から大地を見下ろして、私はその手で小さな世界を包み込んだ。
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