かみむすび(18)芽吹きの春
ある夏の朝、私はこの世界に誕生した。
私は立ち上がって世界を見回した。
世界は小さな私にとって圧倒的だった。
それでも世界は私を抱きしめてくれた。
私は秋色に染まる世界を歩いた。
そして世界を愛したり憎んだりした。
それでも世界は世界としてあるだけだった。
私は孤独になり世界に愛されていないと感じた。
世界が世界としてあるなら、私は私としてあらねばならない。
それがこの世界で私のできることだ。
冬の間、私はそのことを考えながらじっと瞑想した。
いったい私は誰なのだ。
私の中で新しい芽吹きが起こった。
透明な緑が弱々しい小さな芽だが、それが私というものだ。
世界は微笑みながら私に眼差しを向けた。
柔らかな風が春を運んできた。
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