かみむすび(17)私の気配
見えない誰かがいつもそこにいる。
そう気づいていたので、私はその誰かを探し続けた。
私がどれだけ探しても、その誰かの姿を目にすることはなかった。
私はその誰かが本当にいるのか分からなくなった。
私はその誰かを探すのをやめてしまった。
その気配さえ無視して、気にしないことにした。
それで何も困ることなどなかったのだ。
むしろ、それで世界のことをより楽しむことができた。
それでも、その誰かのことを思い出すことがあった。
それは昔とまったく同じ気配でそこにいる。
私はもう一度その誰かを探すことにした。
そしてついに私はその誰かを見つけた。
驚いたことに、それは私自身のことだった。
いままでの私は本当の私ではなかった。
湖の水面が湖のすべてではなく、そこには見えない湖底があるように。
私は自分の奥底に沈んでいって、そこで私自身になった。
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