破壊神は我々の世界で優雅に踊る(18)
「もう、このくらいで十分だろう」
その人間は私の心の中でそう言った。
私があたりを見回すと、あの世界は跡形もなく消えていた。
黒い大地がそこに広がっているだけだ。
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私は気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
いくつもの巨大な渦巻たちはひとつひとつ姿を消していった。
そして私であるひとつの渦巻だけが残った。
ただ、いまだにそれは白く輝きながらゆっくりと回っていた。
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「お前、普通の人間ではないな」
私は渦の中から金色の目を見開いてそう言った。
人間の姿をしているが、まるで私を支配しているような目をしている。
その目を見ているだけで、私の怒りが吸い取られるように収まっていくのだ。
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白い渦巻は回る速度を緩めていき、荒々しさが消えていった。
その人間は私に近づき、そして片手を前に出してその渦にそっと触れた。
そのとたん、私の中から急激に力が失われていくのを感じた。
人間はさらに私に近づき、私の中へと入っていった。
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「人間たちを戻しなさい」
そう私に言い残すと、私の中へ消えていった。
私は力を失っていき、渦を維持することさえできなくなった。
白い光は輝きを失い、小さく縮んでいった。
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私は自分が大地の上で塊になっていくのを感じた。
動きが失われて、私は雲の塊のような姿になった。
そこから人間たちが驚いた顔をしながらぞろぞろと出てきた。
私が地上から吸い上げた人間たちだ。
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