かみむすび(16)暗い道
私は真っ暗な道を歩いていた。
ここがどこかも分からない。
ただ歩けるから歩いているだけだ。
どこに向かっているかも知らない。
やがて光が見えて、音がしてきた。
何かの感触があり、匂いや味もした。
何かを感じるということで私は安心した。
ただそれらは狂ったように踊っていて、私は撹拌されて投げ出された。
立ち上がっても目が回って、歩くことも苦しくなった。
私は立ち止まって、足元を見つめた。
足元には何もなかった。
私はここまで歩いてきたかどうかでさえ確かではなくなった。
私はずっとそこにいたのだ。
歩いてきたけど、一歩も動いてなかった。
私は目を上げて真っ暗な道へと視線を移した。
私の感覚がきれいに整列して迎えてくれた。
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