破壊神は我々の世界で優雅に踊る(16)
「我々には守護神ナルタカの教えが分かりません」
そうだろう、分かるわけがない。
だから、お前たちが売りつけている神の教えなど、何の価値もないのだ。
それは私に怒りを焚きつける火種にしかならない。
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私は何度も人間たちに間違いを伝えようとしてきた。
私もぼんやりと日々を過ごしてきたわけではないのだ。
いきなり人間たちに鉄槌を下す真似をしているわけではない。
だが、人間たちは自分の薄っぺらい哲学にあぐらを組んで、私の言葉を見下してきたのだ。
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私は人間の預言者を通して何度も同じとこを伝えてきた。
それは自分自身を知れということだ。
これほど単純明快な言葉であっても、人間たちにはまるで響かなかったようだ。
結局、私の言葉は誰にも見向きもされなかった。
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人間たちはせっせと歪んだ哲学と歪んだ世界を生み出しては相変わらず奇妙な歓喜の声を上げた。
それは間違っている。
私の言葉は大勢の人間の歪んだ世界を称賛する声でかき消された。
それでも私は諦めずに伝え続けた。
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「あれほどはっきりと教えているのに何も分からぬのか」
人間たちが何も分かっていないことに私は悲しみを覚えた。
この人間たちの無理さ加減は私の責任なのだ。
人間の心の歪みも世界の歪みも私の責任だ。
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私は痛みを感じた。
その痛みは黒い岩を激しく振動させ、そしてその振動で岩の表面を砕いていった。
いくつもの砕かれた欠片が岩の周りを勢いよく回り始めた。
小さな岩の裂け目から溢れ出した私の怒りがそこに白い炎となって注がれた。
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「守護神ナルタカよ、鎮まり給え、鎮まり給え」
恐怖に引きつった顔で人間たちが大声で叫んでいた。
人間たちはなりふり構わぬ姿で涙を流しながら祈りを唱える。
その祈りにさえ、私は歪みを感じてさらに怒りを増していった。
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