破壊神は我々の世界で優雅に踊る(15)
「守護神ナルタカよ、我々は優雅ではありませんでした。それでは」
人間たちが話を切り上げて去ろうとしている。
さんざん脅すようなことをしてしまったから無理もない。
私は少し落ち着いて、人間たちの正直な気持ちを聞こうと思った。
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「まあ、そう慌てるな。せっかく話しに来たのだろう」
私はなるべく穏やかな声でそう言った。
人間たちの挙動はまだ落ち着かなかったが、幾分恐れは和らいだようだ。
私は人間たちの言葉を待った。
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「守護神ナルタカよ、我々は何か間違いを犯したのでしょうか」
結局、人間たちは何も知らないのだ。
自分が誰だかを知らずにいる。
これはかなり致命的な間違いだ。
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自分が誰か知らずに生きている人間たちの愚かしさに私はめまいがした。
だから、人間たちには中心というものがない。
そんな人間たちがつくる世界も中心がないのだ。
だから、人間も世界も歪んでいる。
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歪んでいる人間にしてみれば、歪んでいるその世界は美しく見える。
美しい世界をまっすぐ歩こうとしても、歪んでいるから見えない何かにぶつかる。
ぶつかって転んで傷だらけになって、何が起こっているのか分からずに変な笑い声をあげる。
その笑い声は私を苛立たせる。
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私は人間たちに中心を失って歪んでいることを教えなければならない。
それが人間たちの守護神たる者の務めだ。
人間たちがそれに気づかなければ、存在の優雅さは永遠に失われたままになる。
それにはこの世界を破壊して、人間たちにその素の姿を見せつけなければならない。
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「お前たちは優雅ではないから我が優雅さを教えているのだ」
私は人間たちの愚かな言葉を叩き切るようにそう言い放った。
そして人間たちを睨みつけた。
私の中から怒りの力が再び動き出すのが分かった。
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