かみむすび(13)不幸と供に
私は幸福を求めたことがない。
幸福も私にはそっぽを向いている。
不幸な状況にあるとき、私はそれに取り組んだ。
だが、不幸は私の足首から手を離すことはなかった。
私は不幸ではない状況でも足首に違和感を覚えていた。
きまぐれに不幸がその足首を引っ張れば、そのたびに私は泥沼に落ちてもがいた。
それで見かねた幸福が私に手を貸そうとすることもある。
だが、幸福のその手を借りれば、私は幸福に服従しなければならないのだ。
私は不幸に陥るとしても自由でいたかった。
行く手に泥沼の危険があっても、ひとりで歩いていきたかった。
幸福にすがってしまえば、私はその場でくつろいだ岩にされるのだ。
眠りにつかされて、心地よい夢を見させられる。
不幸は常に私を目覚めさせる。
痛みや苦しみは眠っていない証拠なのだ。
不幸には足首を握らせておく。
太陽が本当の太陽であると知っているために。
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