かみむすび(12)絶望の光
人間であった最後の日、私は絶望の中に追いやられた。
周りを素早く見回したが、逃げ場などどこにもなかった。
握っていた手を開いて、使えそうなものはないか探した。
だが、みんなコソコソと毛穴の奥に引っ込んでしまった。
圧倒的な絶望にとっては、私の手持ちの駒など無力に等しい。
私はなす術もなくゆっくりと絶望に飲み込まれながら呆然と宙を見つめた。
いままで私がしてきた良いことや悪いことも絶望にとっては何の関係もなかった。
私が死を覚悟して目を閉じたそのとき、私はそこに小さな光を目にした。
その光は救いに思えたが、この絶望に抗えるのかどうかは分からなかった。
それに、絶望に飲み込まれつつある私にとって、それはあまりにも遠くて小さすぎた。
私が絶望の中で徐々に死んでいくのを感じているとき、
その光が猛スピードで私に飛び込んできた。
私が完全に死んだとき、私はその光に宿っていた。
人間としての私は絶望に飲み込まれて完全に死んでしまった。
だが、私は小さな光として存在していた。
圧倒的な絶望でも、この存在まで殺すことはできなかった。
それどころか、存在の私はすでに絶望を飲み込んでしまっていたのだ。
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