破壊神は我々の世界で優雅に踊る(11)
そして、人間たちはその石版が強くなるように祈りを捧げた。
真実は存在しない。
真実は幻だ。
真実に力はない。
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そうして固定概念が強くなればなるほど、私の怒りは抑えられた。
だが、それで私の怒りが消えたわけではなかった。
私はその中で煮えたぎるようにいつでも怒っていた。
それは人間たちにも伝わり、訳の分からない恐怖の感情として警告を発し続けたのだ。
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人間たちは固定概念で神殿を築き上げた。
そこに私を閉じ込めて、何事も起こらないように押さえつけた。
神殿では大勢の人間たちによって日々祈りが捧げられた。
その声が神殿から絶えることはなかった。
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だが、何事も起こらない日々が続くと、次第に人間たちは油断していった。
人間たちは私が完全に眠ったと思ったのだ。
それで神殿での祈りは途切れ始めた。
固定概念の石版は徐々に力を失っていった。
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黒い岩は時々唸りをあげるようになった。
その唸りは神殿の分厚い石版をも震わせた。
人間たちはそんな私に気づき、慌てて祈りを再開した。
だが、私の怒りは岩の中に充満していた。
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人間たちが神殿の奥の私のところに来るのが気配で分かった。
いくつもの固定概念の頑丈な石壁を通り抜けてここへと向かって来る。
そして、人間たちは私の面前にひざまずくとこう尋ねたのだ。
「守護神ナルタカ、我々の願いを聞いて欲しい」
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願いを聞いて欲しい、だと。
私をここに閉じ込めていおいてなんとも厚かましい物言いだ。
私は黙っていた。
この世界など一瞬で破壊できると知っていはいたが、この状況で人間たちがどう出てくるか興味があった。
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