かみむすび(9)神から生まれた
神を見ることはできない。
春の日の静かな夜に目を閉じて感じるのだ。
神は何も語らない。
夏の日の木陰に座って耳を澄ますのだ。
神は何の意思もない。
秋の日の森の小径をゆっくりと歩くのだ。
神は何もしない。
冬の日の寒さに凍えて身体を擦るのだ。
私はそんな神から生まれた。
私は大地に立ち、何度も息をして、首が痛くなるほど空を見上げていた。
そして、ああ空を飛びたいと思っていた。
それでも神はそうして私の中に宿っている。
神はすべての空を安々と貫いている。
誰もいない深海でいつでも私の手に触れている。
私が神に手を伸ばせば、いつでも神は私を抱きしめる。
そして私は神に笑い声を授けるのだ。
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