破壊神は我々の世界で優雅に踊る(8)
そうだ、ところが真実はただのお飾りにされていった。
我々はそのお飾りの前で、思い通りの世界をつくることに夢中になっていったのだ。
やがて、真実の存在は我々のその創造に水を差す邪魔なものになった。
我々は真実を見えないところに隠して、我々の世界を創造する力に酔いしれた。
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我々には幸福になる力、成功する力が宿っていた。
それが真実の代わりに世界で輝きを発したのだ。
結果的に、世界は真実を軽視し拒絶することを喜ぶ場所に変貌していった。
その時から、明らかに世界は歪み始めた。
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我々はそんな世界を信仰する仲間を増やしていった。
仲間は簡単に増えていき、我々はその力を得てさらに世界を創造し広げていった。
あの真実を隠した場所からは遠く離れていった。
それを思い出したとしても、それはまるで昔話のように現実味なく語られた。
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だれも真実に興味を抱くことがなくなった。
真実はそんな世界を見ても何もしなかった。
そこにはずっと隠れていてと我々に頼まれて、その通りにしている無邪気な悲しさがあった。
真実は人間たちを信じていたのだ。
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我々はいったい何のために生きてきたのだろうか。
真実を忘れ去ることが良いことだと思っていたのだろうか。
きっと誰もがそうするから、そうすることに疑いを持たなくなっていたのだ。
我々は自らつくりだした歪んだ世界に依存するようになり、そしてどんどん愚かになっていった。
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我々は真実を貶めて、美しい言葉や感動的な物語に価値を与えた。
知識を増やして真実を批判することに快楽を覚えた。
この世界で豊かになること、成功することを飽きることなく追い求めた。
そうして、我々はただの貧しくも地を這う醜い生き物に落ちていったのだ。
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そんな生き物がつくる世界が美しいわけがない。
それはどこかぼやけていて苛立つ造形をしている。
私が望んだことはそんなことではなかった。
私はかつて自分だった我々を思い出して、そんなことはやめろと叫びたくなった。
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真実を無視したり軽視したりしなければ良かったのだ。
この真実だけを知っていれば、どんな世界でも救われたはずだった。
我々も世界も生まれながらに醜いわけではない。
それどころか、ただ真実をそこに触れさせておけば、それだけで美しかったのだ。
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