破壊神は我々の世界で優雅に踊る(7)
こうして世界はナルタカによって失われた。
我々自身も世界の消失とともに失われた。
その後、あの光の渦がどうなったのかは分からない。
我々が最後に見たものは激しく渦巻く光の中にある静寂の闇だ。
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ただ不思議なことに、これだけの状況でありながら我々は全滅を避けることができた。
ひとりだけ、その闇の中に残されたのだ。
私がそのひとりだ。
だが、すべてを削り取られた私は、もはや誰でもなかった。
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ナルタカにすべてを剥ぎ取られてしまった私はただ存在するだけだ。
私はかつての人間の姿かたちを失ったまま、ただ深い闇の中でじっとしていた。
そこでは動かずにいることだけしかできない。
ただ、それが苦しいわけではなかった。
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驚いたことに、私はそこで至福に満たされていたのだ。
私には果てしない自由があり、じっとしていながらも何にでもなれる可能性を感じる。
静寂と漆黒の闇は穏やかで、私はそこで春の陽のようなぬくもりに抱かれていた。
ここがあの荒々しい破壊者ナルタカの中なのだろうか。
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かつて私はここに来たことがあった。
私はここから生まれたのだ。
ここは我々が真実の場所と呼んでいた世界だ。
私ははっきりとそれを思い出した。
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ここは今まで我々がいた世界とはまったく違っていた。
我々があれほどまでに固執していたあの美しい世界も、ここに比べたら醜いものに思えてくる。
私はなぜあんな世界を美しいと思っていたのか理解できなくなった。
我々はいったいそこで何をしようとしていたのだろうか。
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思い返せば、あそこは不格好な偽りを積み上げただけの不完全な世界だった。
そう、かつてはこの真実の場所があの世界にもあった。
それは確固たる地位で我々の世界に君臨していたのだ。
真実は何にも増して輝かしく、絶対的で、誰もが誇りを持ってそれに付き従ったものだ。
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