かみむすび(5)砂粒になる
私は波打ち際に立ち海を眺めていた。
海は私から広がって遥か彼方に空の境界を描いていた。
波に揺れる水面が午後の太陽の光できらめいている。
ときおり潮風が身体を通り抜けて、古代の笛の音を耳に残した。
この星に生きているとはこういうことだ。
私がなぜここにいるのかは分からない。
だが、誰がここにいるのかははっきりと分かる。
それは見ることのできない砂粒だ。
砂粒は何にでもなることができる。
だが、それで砂粒であることをやめることはできない。
この星で人間の身体になっても、それが砂粒であることに変わりはない。
私は砂粒なのだ。
砂粒からすべてが創造されている。
砂粒は創造されたものを見ることができる。
その美しさと繊細さに触れていると目から涙があふれてくる。
その涙を潮風が拭っていく。
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