破壊神は我々の世界で優雅に踊る(6)
光の柱は低い唸り音を発しながら渦巻きはじめ、巨大な竜巻になった。
光の竜巻はゆらゆらと揺れるように移動して、そこにあるものをその中に吸い込んでいった。
竜巻が通った後には黒い跡以外に何も残っていなかった。
それは世界から何かを飲み込むたびに巨大化していった。
-
十分に巨大化した竜巻は、さらにいくつかに分裂していった。
いくつもの光の竜巻が空にゆらゆらと伸びて、容赦なく地上の世界を飲み込んでいく。
これに抗えるものなど、この世界には何もなかった。
圧倒的な破壊の力が世界に解放されてしまったのだ。
-
これがナルタカの破壊の舞だ。
我々はその巨大な竜巻をなす術もなく呆然と見上げるしかなかった。
それを止めることなどはもはや不可能で、こうなったらナルタカが自然に静まるのを待つしかない。
その威力の前では、本当に鎮まってくれるのかさえも疑わしいことだったが。
-
遠巻きにその光景を見ていた我々も安全ではなかった。
何人もの仲間がナルタカの光の中に吸い込まれて消えていった。
我々はナルタカから身を隠す場所を見つけようと散り散りに逃げ回った。
しかし、巨大化しさらにいくつもに分裂したナルタカは確実に我々を見つけた。
-
何とかして巻き込まれまいと抵抗する者もいたが、まるで歯が立たなかった。
我々の美しい世界は完全に破壊され、巨大な渦に巻き取られるように消えていく。
空さえもその光は失われて、星ひとつない漆黒の闇に変わっていった。
そこで巨大な光の竜巻だけが生き生きと舞っていた。
-
世界は光の渦に飲み込まれてその姿をほとんど失った。
我々の存在できる大地もわずかになった。
我々はナルタカの鋭い光の渦に触れて、どんどん削り取られていった。
削り取られて、徐々に自分ではくなっていった。
-
我々を人間たらしめていた自尊心、虚栄心、信念、道徳心、罪悪感、知識…。
様々な感情、愛、憎しみ、悲しみ、喜び…。
様々な感覚、鋭さ、鈍さ、快楽、不快さ…。
様々な体験の記憶、至福、絶望、挫折、成功…。
-
我々はそういった自分自身を次々に失っていった。
ついに、我々の最後のひとりがナルタカの光に捉えられ、抵抗も虚しく軽々と持ち上げられて、その中に飲み込まれていった。
光の渦の中は以外にも静寂に包まれた漆黒の空間だった。
我々はそこで音もなくさらにバラバラに分解され、闇に消えていったのだ。
0コメント