かみむすび(1)暗闇の光
真夜中は猫の足音さえもしない静寂の海の底。
夜空は小さな星たちの光で覆い尽くされていた。
私はその中に自分の星を見つけようとした。
星が多すぎてどれが自分なのか分からなかった。
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私を乗せた時の風は素知らぬふりして駆けていいく。
風に晒された私はいつまでも夜空を見上げて星を探した。
そうして疲れて目を閉じると私の与えられた時は終わるのだ。
私が終わっても星の面影を胸に満たされた気持ちは残った。
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私は風のない海の底の真夜中に目覚めた。
見上げると空にはひとつの星もなかった。
私の心に悲しみがこみ上げてきて恐れがそれを飲み込んだ。
私はたったひとつの光でもいいから欲しいと願った。
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それで私は小さな光になった。
深海の暗闇を照らすにはあまりにもわずかな光。
それでも私は光としてこの闇を照らすしかない。
この光だけは決して消えることがないと知っていたから。
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