破壊神は我々の世界で優雅に踊る(2)
我々は世界を美しくしたいと願い、それを実現してきた。
ナルタカはそれが気に入らないのだろうか。
しかし、世界を美しくつくることは我々の本性なのだ。
我々はそれを理由なく押さえつけておくことはできなかった。
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我々は何度も世界を創造し、ナルタカがそれを何度も破壊した。
この繰り返しがこの世界で延々と続けられていった。
我々もナルタカもどちらもそれをやめる気はなかった。
我々はお互いに苦しめ合うようなこの状態を収める方法を模索した。
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我々が知らないことは、ナルタカの怒りの理由だ。
ナルタカの怒りを鎮めるだけではこの問題は解決しない。
その原因を取り除かなければ、ナルタカの怒りはいつまでも収まらない。
神殿での祈りも、結局は何の役にも立っていないのだ。
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我々は勇気を奮ってナルタカに話しかけることにした。
いままで、恐ろしくて誰もナルタカを呼び起こそうなどとは思わなかった。
しかし、怒りの原因を知らなければ、我々の世界は破壊され続けるのだ。
それを阻止するためには、それを知るナルタカ本人に直接尋ねなければならない。
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我々はナルタカの神殿に赴いた。
重厚な石造りの神殿の中では、大勢の神官たちが唱える低い声の祈りが厳かに響いていた。
神殿にはいくつかの巨大な石の扉があり、奥のその場所を明確に遮っていた。
我々は厳重に閉じられていたいくつかの扉を開けて奥へと進んでいった。
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神殿の最深部はしんと静まり、そこには美しい金銀の装飾を施した木造の祠があった。
その祠の扉を開けると、大きな牛ほどの黒い岩が鎮座していた。
わずかに照らすロウソクの薄明かりの中で、その岩は深海のような静けさをまとい、近寄りがたい雰囲気を漂わせている。
これがナルタカだ。
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我々はナルタカを前にして、その神聖な姿に息を呑んだ。
その静けさにあてられたのか、我々はしばらくの間、岩を見つめるばかりだった。
あの恐ろしいナルタカはいまやただの大きな岩となって深い眠りについているようにも見えた。
我々はナルタカに恐る恐る声をかけた。
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「守護神ナルタカよ、我々の願いを聞いて欲しい」
我々が黒い岩に向かってそう言うと、遠雷のような音が響いて、岩の表面がわずかに波立つように動いた。
その一瞬で我々は何か得体のしれないものを感じ、本能的な恐怖で一気に顔から血の気が引き、知らずに身体がガタガタと震えた。
岩を凝視しながらつばを飲み込もうとするが、そのつばがなくて喉が引きつった。
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