その魂は果てしない旅の終わりに(1)
ようやくここにたどり着いたあなたに何を語ればいいだろうか。
あなたがここにいることは私にとって驚くべきことであり、
まずは目の前のあなたを称えたい。
あなたがここにたどり着くには長い年月を必要としたはずだ。
それがとても困難なことだったとよく分かっている。
地球で人間が使っている時間でいうとそれは数千年になるだろうか。
あなたは黙って微笑んでいるが、少しの間ここで私に語らせて欲しい。
それはもちろんあなたのことについてだ。
私はずっとあなたを見てきたのだ。
いまここで私はあなたの物語を語らなければならない。
あなたの魂はこの宇宙で悠久の時を漂流し続けてきた。
そしてその魂はこの地球にたどり着き、そこで人間として生まれた。
人間として生まれることで、魂は地球という環境に適応しようとした。
地球上における人間が魂の器になったのだ。
そしてそこからあなたの人間として生きることが始まった。
人間はその人生を何度も繰り返すことになった。
人間の身体には生存の期限が刻まれていた。
人間である限り死ななければならないのだ。
身体がひとつの終末を迎えると、魂は自分を核にして人間の身体を再生させた。
人間としての人生は1度きりではなかった。
その再生はただの繰り返してはなかった。
次の人生は前の人生よりも高度な場面に変わる。
高度な場面とは、そう、あなたが誰なのかという答えに近づくということだ。
魂は問題を抱えていた。
それは魂が何も知らないということだ。
何も知らない魂は自分が誰なのかすら分からなかった。
その魂の最初の望みが自分が誰かを知ることだった。
その望みを抱えたまま魂は人間になった。
魂は地球で人間になったが、そこでも何も知らないということは同じだった。
人間はまるで無に近い状態から地球上で自分を構築していかなければならなかった。
もちろん人間に魂の記憶はなかった。
人間として生まれたときその前には何者だったかの記憶は喪失する。
人間はなぜここで生きているのかさえも分からない。
何をすればいいのかも分からない。
それは記憶喪失になってジャングルに放たれるようなものだった。
そこできっと途方に暮れるような気持ちになったと思う。
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