悲しみの傷を抱えたままで(8)
私は静かに座る時間を続けてきた中で、
初めて何かをつかんで世界に戻ることができました。
しかし、目を開けて世界で生きる私は、
まだ身体であり心であり続けました。
やはり身体と心の感覚は強烈で、
それを自分ではないと断言できるほどの確信が持てません。
私は世界に戻ったとたんに、
静かに座っていたときの 存在しているあの感覚を
急速に失っていきました。
そして、気づけば心の中に悲しみの傷が
深い海溝のように横たわっていました。
それを感じて私は失望しましたが、
小さな希望が私を支えているのも分かりました。
それから、私は何度も座って、
心の奥へと潜行していきました。
そして、あの存在の場所に長くとどまれるようになりました。
あるとき、自分とは身体や心ではなく、
その存在が自分なのだという確信が起こりました。
それを消すこともできず、
そこから別のものになることもできず、
そこから離れることもできず、
否定することさえできなかったからです。
こんなに確かなものを私は知りません。
世界は私を裏切り続けましたが、
この自分だけは信頼できます。
私ははじめて自分の拠り所として
確かなものを手に入れたと思いました。
いえ、それは手に入れたと言うよりも、
それは私の中に以前からあって、
ただそれに私自身が変わっていったのです。
私はその存在になりました。
目を開けてこの世界に戻っても
それは変わりませんでした。
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