悲しみの傷を抱えたままで(7)
あるとき、私は心の一番の奥底にたどり着きました。
これ以上、どうやっても深く行くことができません。
そこが私の中の行き止まりです。
そこは完全に停止していて静寂に支配されていました。
どこにも思考やイメージは見当たりません。
それはまったくの無の世界です。
そこで私だけが、ただ存在していました。
すべてが暗闇に飲まれていて、
そこに自分が存在しているという感覚だけが、
かろうじて残っている状態です。
存在している。
これが私の一番深いところにある感覚でした。
これ以上、自分から取り去るものは何もありません。
私は存在していないという状況になることができません。
思考や感情は消し去ることができましたが、
この存在だけはそうすることができませんでした。
私はこれが本当の自分ではないかと気づきました。
存在しているとは自分のことを意味しています。
それは自分以外の何かが存在しているということではありません。
そう、私は、確かにそこに存在していたのです。
いままで、私は自分とは身体や心の動きだと思ってきました。
だから、身体が傷つけば、私が傷ついたと思い、
心に痛みがあれば、私は痛みがあると思ってきたのです。
しかし、存在には傷つく身体も悲しみを感じる心もありません。
それでも私は存在しています。
つまり、私は身体でも心でもなかったということです。
そう分かったとき、私は心の暗闇に光が差すのを感じました。
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