悲しみの傷を抱えたままで(6)
自分の悲しみを持て余していた私にとって、
この話はその時の私にとって唯一の希望になりました。
もちろん、まだ何も分かってはいませんでした。
本当の自分とは何を意味しているのでしょうか。
預言者はそれが自分の心の奥底にあると言っています。
私は静かに座って目を閉じました。
そして、自分の心の中へと目を向けました。
私の心の中は、思考や夢のようなイメージ、様々な記憶、感情が、
ひっきりなしに現れたり消えたりして渦巻いていました。
私はその渦の中に飲み込まれて溺れそうになりました。
私は悲しみの波に直接さらされている感じがしました。
そこにいても悲しみの傷がうずくだけで、
どこにも本当の自分など見当たりません。
それでも私は何度も心の奥への潜行を試みました。
その度に悲しみの傷にさらされて、
そして何も見つからず失望しながら戻ってきました。
そんなことを繰り返していると、
やはり、あの預言者の言うことは
間違いではないかと疑いもしました。
しかし、今の私にはあの預言者の言葉しか希望がなかったため、
上手くいかないからといって、
それをすぐに手放す気にななれませんでした。
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