悲しみの傷を抱えたままで(2)
人生を明るく楽しく生きていくためにはどうすればいいか、
私はそういった話に興味を惹かれました。
それは私が悲しみや苦しさに耐えていたからに他なりません。
私はこの世界で生きていくのであれば、
心の中の暗く湿ったその重さを何とかしたかったのです。
そのために様々な方法を試してみたいと思いました。
今まで上手く悲しみを取り除けなかったのは、
私のやり方が悪いのであって、
きっと他に良い解決方法があるかもしれないと思ったのです。
しかし、その解決方法はそう簡単に見つかりませんでした。
一時的に楽になる方法はいくらでもありましたが、
悲しみから完全に私を解き放つまでには至らなかったのです。
私はこの悲しみと苦しさと共存していくことも教えられました。
そこから逃げるのではなく、
自分には悲しみがあるという事実を受け入れるのです。
悲しみを消し去りたい、苦しみから逃れたいと思うから、
それが私の心の重さになるのであって、
そうしなければ、私の心から圧迫がなくなるというのです。
それは、私の問題は悲しみや苦しみにあるのではなく、
それを消したり逃れたりしたいという思いにあるという考えでした。
受け入れるという方法を試してみると、
確かに以前よりも私の気持ちが和らぎました。
ただ、やはりそれは悲しみや苦しみを
完全に消す方法ではありませんでした。
依然として、私には悲しみや苦しみがありました。
私はその事実を受け入れてはいましたが、
本当のところではやはりそれを消し去りたいと願っていました。
この受け入れることと消し去りたいと願うことが、
私の気持ちとして同時に存在するため、
私の中で徐々に混乱が起っていきました。
私の中にある消し去りたいという気持ちを否定し、
それに覆いをかけて隠し続けている状況に、
どうにも心の整理がつかないのです。
その混乱で、私はさらに辛くなってきました。
受け入れるという方法を続けていると、
いつまでも心の中で摩擦が起こり続けます。
ついに私は受け入れるという方法を
続けることが難しくなりました。
その方法では自分を偽っているという事実が、
悲しみにも増して、
私を責めるようになっていったからです。
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