生きているという現実の中で(10)
それらはみな、死んだらなくなってしまうものばかりでした。
それはまるで浜辺で砂の城を作っているようなもので、
どれだけ素晴らしい城をつくっても、
満潮の波によって、すべて浜辺の砂に還っていきます。
私に欠けているもの、
それは決して無くならないものです。
たとえ死んでも無くならないものが、
私に欠けているものです。
人生でどれだけ努力して作り上げたものでも、
私の死によって、それらは無に還っていきました。
それは自然の持つ摂理であり、
どうしても避けられないことでした。
私の人生の成果がすべて無になると知ると、
やることなすことが虚しくなっていきました。
すべてが無に帰する運命から逃れられないのであれば、
今の自分の楽しみや人生で作り上げてきたもの、
貴重な世界の旅の記憶の意味が分からなくなってきました。
どんなに素晴らしい体験でも、
その瞬間は確かに満たされますが、
それは記憶になり、やがて記憶からも消えていくのです。
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