超人ザオタル(84)来訪
「ええ、起きてますよ。
どうぞ入ってください、ハルート」
扉が静かに開いて、ハルートが入ってきた。
椅子を勧めると、そこに座った。
世界のすべてが流れるように動いて、
まるで完全に計算されたように美しい。
ランプのオレンジ色の光が二人の顔を照らしている。
「今日はとても興味深いお話を聞けました」
ハルートは微笑みながら落ち着いた声でそう言った。
「いやいや、結局アジタ殿には興味を持ってもらえなかったようだ。
なかなか難しい話です。
自分の力不足を感じたましたよ」
私はそう言って頭を掻いた。
「結局は、この話をどう受け取るかということ。
これはザオタルさまではなく、受け取り手の問題なのではないでしょうか。
私にとってはとても必要なお話でした」
ハルートは少し真顔になってそう言って続けた。
「自分とは誰なのか。
この質問を深く掘り下げようとする人はまだ少ないのです。
ここで問題になるのは答えではなく質問だとうこと。
自分とは誰なのかという質問の意味です。
この意味を正しく捉えないと、正しい答えも得られない。
私も母からの導きがなければ、分からなかったかもしれません。
多分、アジタさまと同じように考えていでしょう。
自分が誰かという質問を無視することはできません。
誰もがこれからも直面し続ける問題です。
これでアジタさまも改めて直面したわけですから。
これから何度もザオタルさまの言葉を思い出すでしょう。
自分とは誰かという質問から逃れられなくなっています。
きっとアジタさまはまた草原に行きますよ。
行って確かめなければならないと思うでしょう。
これこそが、世界が求めることだと感じます。
そして、その世界がザオタルさまなのです。
ああ…、生意気なことを言ってしまいました。
すみません…」
ハルートは恥ずかしそうに笑った。
「アジタ殿にはアジタ殿の生き様がありますから。
それは尊重しなければならないこと。
それが世界の望むことであり、そうしてこその何かがある。
私にできることは、自分の知っていることを話すぐらい」
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