神の声 第4章:星空の伝承(5)
私の愛することへの探求は続いていった。
この愛を極めれば、
私の心の闇を振り払えるかもしれないとも思った。
だが、愛のある人間になることは簡単ではない。
私は段々と愛することに苦悩するようになった。
自分の気持ちが穏やかな時なら愛することは簡単にできる。
けれども、気持ちが苦しい時は逆に暖かく愛されたいと思う。
そんな時は愛されない悲しみによって、
言葉も態度も刺々しくなる。
そのとき、私はまるで愛のない人間になってしまうのだ。
どう頑張って気持ちを整えようとしても、
この愛することの浮き沈みに流されてしまう。
あるとき、私は別の神と話ができる人間の噂を聞いた。
その神は愛とは違うことを説いているという。
私はその人間の話を聞きに行った。
その別の神と話ができる人間によると、
その神はあるがままの自分で良いと言っているというのだ。
愛することも愛されることも、あるがままで良い。
感情に波のある弱い自分さえも受け入れて生きて良いという。
私は目が覚める思いがした。
これこそ私が求めていた救いだと思った。
無理に愛することなどないのだ。
自然にあるがままに生きることこそ私に必要なことだ。
その人間は神の言葉をこう伝えた。
あるがままに生きなさい。
それが神の望むことです。
人間はあるがままに生きるよう神に創られたのです。すべては神が導いてくれます。
私はあるがままに生きることにした。
それは、私をとても自由で解放された気持ちにさせた。
愛に縛られていた心がとても軽くなる。
愛したいときに愛し、悲しいときに悲しむ。
怒りたいときに怒り、笑いたいときに笑う。
それから、私は自分の気持に正直に生きていった。
だが、あるとき、これで良いのかと思った。
あるがままで生きることは確かに楽になるが、
それによって自分中心になり、
またあの孤独に陥ることもある。
私の心の中のあの闇も相変わらずそこにある。
あるがままでいることは、
私の歪んだ何かを修復しているわけではないのだ。
私はあの闇を消し去って、
自分が完全に満たされることを先延ばしにしている気がした。
まるで見たくないことは見ないとか、
解決できないことは解決できないと言っているようで、
そんな気まぐれな自分になろうとしていることが
少し悲しくなってきた。
そこで、神と話せる人間にそのことを相談すると、
そう思うこともあるがままで生きなさいと、
神は言っていると言う。
それはその通りだと思うのだが、
どうもこの考えは、
私の抱えている根本的な問題の解決になっていない気がした。
それでも、私はあるがままに生きていった。
心の闇は照らされることなく、
いつ孤独に苦しむかも分からないままでも、
その時の私にはそうするしか救いがなかったのだ。
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