神の声 第4章:星空の伝承(4)
ある時、何故か私は自分が不完全な気がした。
人生で何度も達成感や満足感を味わってきたのに、
何かが欠落していて完全にならない。
どんなに素晴らしい人間になって輝いても、
自分のどこかに闇があって、
どんな光もそこを照らすことができないのだ。
それを照らせないために、
私は完全成ることができない。
私はそれに気がついてから、
理由もなく苛立つことが多くなった。
それで他の人間にこの不満をぶつけ出した。
他人を自分の支配下に置いたり、
コントロールしようとしたのだ。
そうすることで、私はこの苛立ちを解消して、
新しい満足を引き出せるのではないかと思った。
だが、結果は悲惨なものだった。
私の孤独を癒やしてくれていたはずの人々が、
次々とそんな自分から離れてしまった。
私は個人の人間として孤独を感じるようになった。
遠い過去にあったような、孤独に対する嫌な記憶が蘇る。
その孤独は私の心を蝕んでいくように思えた。
私は孤独であることに焦りを感じた。
私を孤独に追い込む人々に対して憎しみを感じた。
私の心は泥沼にはまっていくような悪循環に陥り、
いつも胸の中に苦しい葛藤を抱えるようになった。
どうもがいても、
この窮地を立て直すことができない。
そんな気落ちが続いていたある日、
私は、神という存在について、
誰かが話しているのを耳にした。
どうも、その神とやらは、
人間の悩みを解決してくれるらしい。
その神と話ができる人がいて、
その神の言ったことを守れば、
人生の苦しい思いから解放されるというのだ。
私はその話に救われる思いがした。
もう自分では気持ちの整理がつかず、
この苦悩を持て余していたのだ。
私はその神と話ができる人間に会いに行った。
その人間はとても人気があり、
いつも大勢の人達に囲まれていた。
神はこう言っている、
そう尊厳な面持ちで神の言葉を伝えた。
神を信じなさい。
神は愛しなさいと言っています。
あなた方はお互いに愛する必要があります。
すべてに愛をもって接しなさい。
愛に勝るものはありません。
愛によってあなたの苦悩は打ち砕かれます。
私はその言葉を聞いて目が覚める思いがした。
愛することなんて知らなかった。
いままで本当に自分勝手に生きてきた自分を恥ずかしく思った。
だが、どう愛すれば良いのだろうか。
その人間は言った。
自分を愛するように他の人を愛しなさい。
確かに自分のことは大切だから、
その思いを他の人にも持てば良いのだ。
きっとこれが愛することだ。
私は神に感謝した。
自分の苦悩をどうにかできる一筋の光明を見た気がした。
それから私は愛をもって生きるように心がけた。
愛をもって人に接すると、
とても満足した気持ちになった。
愛することで、また人とつながり始め、
私の孤独感は癒えていった。
だが、それも長くは続かなかった。
理想と現実とでは話が違う。
私が誰にでも愛をもって接しようとしても、
昔、私からひどい仕打ちを受けた人間は、
そんな私を偽善だとか嘘つきだとか言って毛嫌いする。
私は愛を持って接しているのにわけが分からなかった。
そんな人間には、つい私も攻撃的になってしまう。
そうするとあの孤独感が心に蘇ってきた。
そんな自分になることが恥ずかしくなり、
そのことを神と話をする人間に打ち明けると、
愛を持ち続けることです、と言われる。
神はそう言っていると。
私はこれはこれでなかなか大変なことだと思った。
まるで新たな苦悩の種ができたようだ。
それでも私は神を信じ始めていたので、
愛することを心に生きることにした。
たとえそれが上手くいかないことがあったとしても、
私にはそれしか救いがなかったのだ。
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