神の声 第4章:星空の伝承(3)

人間が感じる世界は、

すべてが洗練されていて美しかった。

だが、私は世界を感じつつも、

この宇宙でひとりだけという感覚から

離れることができなかった。

すべてが自分でできているのだ。

世界は様々な姿で溢れているが、

結局、それは自分でしかない。


それは、まるで自作自演の劇場のようだ。

演じている役者もその舞台、観客さえも自分なのだ。

そう思うと何も面白くなくなる。

私は生命が躍動するこの世界を眺めながら、

結局、ここには自分しかいないという、

あの最初に感じた孤独感を

消し去ることができないままでいた。


そこで、私は大きな決断をした。

私はこの宇宙空間すべてであり、

この宇宙に創造されたものすべてだが、

そのつながりを個々に断ち切ることにしたのだ。

そうして自分を分断すれば、

つながりのない無数の存在に分かれることになり、

私はひとりではなくなる、そう思った。


私はある人間の意識になり、

そこで大元の自分とのつながりを断ち切った。

私はこの星に生きるひとりの人間になった。

その瞬間、宇宙の存在すべてが、

ひとつひとつに分断された。


私は、ひとりの人間になることで、

個人として他の人間と

何かしらの関係を結ぶことができた。

私と別の人間が居るという感覚は新鮮な体験だ。

個人同士のつながりは、

私の中から孤独感を消していった。


他の誰かは友人であったり家族であったりした。

私はひとりではなく、

この世界を共に生きる仲間がいる。

それはそれで物事が思い通りにならない不自由さもあったが、

ともかく、私は孤独ではなくなったのだ。

これに勝る解放はない。


私は宇宙すべての存在という自分を失ったが、

分断され制限されたひとりの個人になったことに満足した。

だが、時折、元々のひとつの自分が、

心の奥から立ち上ってきて、その分断を修復しようとする。

依然として、ひとつの自分とのつながりは開いているのだ。

それは個人としての自分を飲み込もうとする。


ひとつの自分を別々に分断することは、

不自然なことのようだ。

私は元に戻ろうと、そこに吸い寄せられていく。

その力は巨大な竜巻のように強い。

それに飲み込まれてしまえば、

私はまたすべてとつながってひとりになり、

孤独の中で世界を過ごす自分に戻ってしまう。


そこで、私は元々のひとつの自分とのつながりを閉じて、

その場所を二度と見つからないよう、

心の奥底に隠すことにした。

私はそこを闇で厳重に封印した。

そして、そのことを忘れることにした。

自分の記憶を限られたものにしたのだ。


それだけではなく、

私が不用意にそこに近づかないようにする必要がある。

そのためには、そこに近づく者を恐れさせなければならない。

私は人間に恐怖を引き起こさせる存在に、

そこを守らせることにした。


その心の闇の番人を人間に悪魔と呼ばせた。

悪魔はそこに近づく人間たちを恐ろしい形相で威嚇する。

こうしておけば、私はひとつの自分に戻ることなく、

ずっとひとりの個人としての自分でいられる。


この人間の仕組は予想以上に機能した。

私がひとつの自分に近づくことは殆どなくなり、

ひとつの自分が私を飲み込みに来ることもなくなった。


私は安心して、

この世界で大地を歩きながら食べ物を探して疲れ果てたり、

雄大な風景を目にして感動の涙を流したり、

友人たちと食事をして楽しんだり、

病気で苦しんだりするひとりの人間を満喫した。


この小さな体と心が自分だという感覚は、

私にとって驚きと発見の体験を与えてくれた。

友たちと共に何かを創り上げたり、敵たちと命をかけて戦う、

そんないきいきとした人間の人生を送る。

これが自分だ。

それはひとり宇宙で目覚めた私が求めていたことそのものだった。


人間の寿命は時間の制約の中にあるため限られていた。

元々のひとつの自分は時間さえも自分の中にあって、

それに制約されることはない。

その点、個人としての自分は多少不自由だった。

個人である限り、この寿命という制限を超えることはできない。

ただ、私は望むだけ何度も個人の人間として生まれ変わることができた。

そうであるなら、寿命の制約も問題ないと思われた。

私は繰り返し個人の人生を送り続けていった。


人間の人生は可能性に満ちている。

私はどんな人生を送るかを考えるようになった。

どんな人生でも実現可能なのだ。

私はどんな人間になるかに夢中になった。

私は望む自分になって満足することもあれば、

失敗して絶望することもあった。

成功も失敗も私の冒険心を満たしてくれた。

そして、次の人生ではさらに自分の可能性を

飛躍させるのだと熱心に努力した。


そう人生を繰り返すうちに、

私は完全にひとりの人間になり、

大元のひとつの自分との分断は決定的になった。

ひとつの自分だったことは闇の中に忘れ去られ、

私はそのことを思い出すこともなくなったのだ。


空風瞑想

空風瞑想は真我実現の瞑想法です。瞑想の中で今まで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。「私は誰か」の答えを見つけて、そこを自分の拠り所にするとき、新しい人自分としての生が始まっていくでしょう。