神の声 第4章:星空の伝承(2)
私の物語をお話しよう。
私の始まりはこの宇宙の前に遡る。
私はそこで目を覚ました。
どうも長い間、眠っていたらしい。
誰が私を目覚めさせたのかは分からない。
とにかく、私は、目が、覚めたのだ。
そこは見渡す限り暗闇だった。
そして、誰もいない。
さらに、私は自分が誰なのか知らなかった。
ここに居る私はいったい誰なのだ。
そう思った。
私は自分の姿を確かめようとした。
しかし、どう頑張っても、
私は自分で自分を見ることができなかった。
暗闇の中でただ自分で居ることしかできない。
私は少し落ち着いて辺りを見回した。
そこはすべてが停止していて何の動きもない。
暗い静寂が在るだけだ。
私だけが目覚めて存在している。
それだけが確かなことだった。
私はそこに自分以外の何かを見つけたくなった。
自分以外の何かが存在すれば、
自分が誰なのかか知ることができるかもしれない。
そう思ったのだ。
そう思った瞬間、私の中で何かが弾けた。
何かは分からないが、
私の中で何かが新しく生まれたようだ。
それは透明な何かであり、
とても細かい粒子のようでもあった。
最初に空間がすごい速度で広がり、
その広がる動きに伴って時間が始まった。
その空間の広がりと共に、
小さく弾けた無数の私が、
その中を四方八方に散らばっていく。
それは光り輝く雲のようにも見えた。
雲は空間の広がりを追いかけるように、
その中を急速に広がっていった。
暗黒の闇は白く光る霧で満たされていった。
私はそこで初めて動くものを目にした。
だが、それは私の別の何かというよりも、
私が何かに変容した感じだ。
これが私なのかと目を見張った。
輝く光とそれが散らばっていく動きは私そのものだった。
そこで無数の私に再び変化が起こった。
広がっていく空間の中で、
私は何かの法則にでも従うかのように所々で集まり始め、
それが燃え上がったり冷えたりしながら固まっていって、
幾つもの丸い星になっていった。
暗闇が戻り、そこに点々と星が輝いている。
今で言う地球上からの星空の眺めに似ている。
星たちはそれぞれに特徴ある姿になっていった。
ある星では大量の雨が降り続けた。
その水が溜まって星を覆い尽くした。
溶けた赤い岩石が大地を隆起させ、水面を切り裂いて陸地が現れた。
穏やかな風が雲を運び、時にはそれが激しい嵐になった。
時にはその水は全て凍りつき、またすべて干上がった。
熱を帯び激しく光り輝く巨大な別の星がその星を照らし続ける。
過ぎていく時間の中で、星の表情が目まぐるしく変わっていく。
星たちは法則に従って動き始めた。
そうして私の中に宇宙という世界が創造されていった。
私はこの動きに満ち溢れた世界を夢中で眺めた。
それはあまりに美しく、私を魅了したのだ。
そして、この世界で生きてみたいと思った。
私は宇宙を見渡す目で空間の中を風のように旅していった。
ある時、私は暗闇の中に青く光る宝石のような星を見つけた。
その星にはたくさんの小さな命が生まれていた。
私はその生命の内側から、この世界を眺めてみた。
私は宇宙全体を包み込む自分から、
その宇宙を眺めるたくさんの小さな点になったのだ。
すべてが自分なので、
私は当たり前のようにそんなことができた。
星の変化は止むことがなく、
そこは無数の生命が次々に現れた。
大地は濃い緑に覆われ、そこに色とりどりの花が咲いた。
そこに小さな虫たちが花を求めて舞っている。
私は花になったり、虫になったりした。
しばらくして、種々の動物たちが現れ、
そして、人間が登場した。
こうした変化も私が望んだから起こったようだが、
どうやってそれを引き起こしたのかは記憶にない。
私は人間の目で世界を見てみた。
その澄んだ目ですべて自分でできている素晴らしい世界を眺めた。
人間の感覚は他のその生命よりも洗練されていた。
世界の美しさを強烈に感じることができる。
人間、これが私の望んでいた自分だと思った。
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