超人ザオタル(72)真実の探究

一陣の風が吹いて、岩山を通り過ぎていった。

「ここまで来るのに、ずいぶんと時間がかかりました。

大樹の少年イサトにだいぶ助けられましてね。

草原をさまよっても何も見つけられず、心が折れかけました。


何度も大樹に戻って、とにかく教えられた通りに瞑想をしてですな。

イサトにも、信じられるものはもうそれしかないだろうと言われ。

そんな何気ない励ましの言葉に心を奮い立たせ。

もう何年が過ぎていったかさえ分からなくなりました。


そうして草原をさまよった挙げ句に、ようやくこの岩山を見つけたのです。

ここは瞑想と現実の境が曖昧な場所で。

私は現実に岩山で瞑想しているのですが、その中で同じ岩山に座ってもいます。

そこで気づきを待ち、また深い海のような世界に戻っていきます。


私は私の知りたかったことをようやく掴みかけています。

それを確かにするために、いつかザオタル殿が来てくれるだろうと信じていました」

それで私はここにいるのだ。

この岩山はあらゆる時空とつながっているのか。


私は自分の実体がどこにいるのか分からなくなった。

今が現実のような気もするが、これは明らかに瞑想の世界だ。

だが、あの町の生活が夢の世界で、こちらが現実とも言えるのでは。

それはどうあれ、私はいまここで未来のアジタと会っているようなのだ。


私は穏やかな気持でアジタの話を聞いた。

それで慌てふためくようなことも起こらず、

不思議なことに、すべてを知っているように平静だった。

そんな自分を奇異に思うこともなく、この状況に溶け込んでいた。


「大変なご苦労をされたようで。

なんと申していいやら、言葉が見つかりません。

それで、その、アジタ殿の言われる気づきとはいかがなものなのでしょうか」

こんなとき、アムシャなら何と言うだろうかと考えた。


「そうですな、感慨に浸っていても仕方ありません。

大事なところはそこなのです、ザオタル殿。

あのとき、自分とは誰かという話をしました。

ザオタル殿は自分とは人間ではないと言われた。


私はそれに強く反発しました。

人間でないわけがないと。

それならいったい自分とは誰なのか。

それは存在だと。


私はその存在について瞑想の中で学んでいきました。

それが私の気づきの大部分になります」

アジタは早口で一気に話そうとしていたが、

私はゆっくりでいいと手振りで伝えた。


空風瞑想

空風瞑想は真我実現の瞑想法です。瞑想を実践する中で、いままで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そうして「私は誰か」の答えを見つけ、そこを自分の拠り所にするとき、新しい視点で人生を見つめることができるようになります。