超人ザオタル(66)使命
「それを自分で探り出して、ハルートに伝える」
「はい、そうすれば、真実は世界に伝わるでしょう。
それがこの時空での私たちのやるべきことになります」
私は自分が真実、つまり存在だと知っている。
だが、真実は自分が誰だか分からないのだ。
それを知らしめて、私という時空は完結するのだ。
それまでは、拡張された草原でさまよっているようなものだった。
やるべきことはまだ残っている。
やるべきこと、それはこの世界と真実をつなぐことだ。
世界には世界の言い分があり、それを確立させるために働いている。
真実は真実として存在しているが、そんな世界で居場所を失っている。
世界から見れば、真実はまるで陽炎のように掴みどころのないもの。
世界にとって何の価値があるのかさえ分からない。
真実には何の価値もない、それが現実的な世界の対応なのだ。
そのつなぎ目となる者、それが私だ。
私は真実であり、同時に世界でもある。
真実は世界での価値を越えていて、すべての価値として存在している。
それを理解しているのはこの世界で私だけだ。
その私をこの時空で広げていくこと、それが今の私に託された使命だ。
アルマティが言っているのはそういうことだろう。
果たしてハルートは真実についてどこまで知っているのか。
多少はアルマティから伝え聞いているはず。
私は静けさに包み込まれているのを感じた。
そこから小さな泡が次々に弾けるような音が聞こえた。
それは次第に大きくなり、滝を流れる水の音に変わった。
その音に流されるようにして私は身体へと戻っていった。
閉じたまぶたに光を感じる。
私はゆっくりと目を開いた。
目の前にははルートがいて、まだ目を閉じている。
ひとつ息を吐いて、ハルートがゆっくりと目を開いた。
「…、お話するつもりが、瞑想をしてしまったようです」
そう言って、恥ずかしそうにうつむいた。
「いや、もうアルマティとは話をさせてもらったよ」
私はそう言って微笑んだ。
ハルートは顔を上げて不思議そうに微笑んだ。
私の言葉を信じようとしているのが分かった。
0コメント