神の声 第3章:大樹の精霊(5)

「心に鋭い剣を構える誇り高き光の勇者よ」

「自分が存在から創造されているというなら」

「なぜ、生命たちはそのことに気が付かないのでしょう」

「それ程の真実であるなら、もっと簡単に分かるはずです」

「そのことに全く気が付くことができず」

「生命たちはこの世界の現れを唯一の拠り所として」

「そこに生きることで精一杯です」


「そのため、この世界で望みが叶わないと知ると」

「すべての望みが絶たれたかのように絶望してしまうのです」

「私はこの世界に無上の喜びがあるのと同時に」

「このような深い悲しみが在ることも知っています」

「この世界から与えられる喜びとともに生きたいと望みながら」

「それが与えられないと知ると」

「世界から疎外されていると感じて」

「生命たちは悲しみに沈んでしまいます」


「もし、もっと簡単に自分の真実が明らかにされるなら」

「たとえ悲しみに落ちたとしても」

「それは決して世界から見放されているわけではなく」

「それさえも生きることの多彩な変化のひとつだと知ることができるため」

「多くの生命に対する救いになる気がします」


「でも、まるでそうなることが都合の悪いことのように」

「存在は見つからない所に潜んでいるように思えます」

「なぜ、存在は誰にも気付かれぬように隠れているのでしょうか」

 精霊はそう男に尋ねた。


「聡明なる生命の根源にして、真理に向けて伸びる枝に智慧を授ける老師よ」

「本当の自分が生命たちに気付かれないのは」

「それを生命自身が望んだことだからです」

「真理を隠しておくように決めたのは生命自身」

「生命は真理を隠すことで、この世界にのみ生きることに決めたのです」

「そうして幻想を真実に見立てることで」

「この美しい世界を救うことになると思ったからです」


「けれども、偽りを真実に見立てて」

「この世界で生きることは辛さを背負うことにもなります」

「結局、生命はその辛さから解放されるために」

「この世界に真実を求めなければなりませんでした」

「真実を知るために生きていこうと思い直したのです」


「ただ、今度は真実を手に入れることできなくなっています」

「自らの手で真実を闇深くに隠してしまったからです」

「それに生命は、その自分のしたことをすっかり忘れていて」

「真実をどこに隠したのかさえ思い出せません」


「たとえ、それを思い出せそうになったとしても」

「それと共に薄れていく世界の現実感に抵抗を感じて」

「再び幻想を自分の拠り所として取り戻そうとします」

「そしてまた、真実を見なかったことにして」

「そんなものは存在しなかったと自分に言い聞かせます」

「これが誰にも気付かれずに存在が隠されている理由です」

 男はそう精霊に答えた。


空風瞑想

空風瞑想は真我実現の瞑想法です。瞑想の中で今まで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。「私は誰か」の答えを見つけて、そこを自分の拠り所にするとき、新しい人自分としての生が始まっていくでしょう。