超人ザオタル(49)終わらぬ道
しばらく静かな時間が流れた。
私はアムシャの言葉に引っかかることがあるのに気づいた。
「アムシャ、まだここからも道があるのですか。
私は最終地に到達したのではないのですか」
私の満たされた感覚は一気に覚めていった。
「もちろんそうだ、ザオタル。
この先にも道はある。
私は誰かという疑問の答えは存在だった。
そしてその存在とは何かを知らなければならない。
それを感じるだけではまだ理解があやふやなままなのだ。
そこを突き詰めていくのがここからの道になる。
最終地にはいるが、最終地とは何かを知るのだ」
「そういうことなのですね、アムシャ。
確かに私はまだ知らなければならないことがると分かります。
でもそれは、また手探りで進まなければならない道のようです。
私はその先の道がまったく見えていません」
「もうそれは見えているから大丈夫だ、ザオタル。
自分で道を切り開いていける。
おまえはすでにすべての答えをその手に握っているのだ。
あとはその手を開くだけでいい」
とても分かりにくい話だが、私は理解しようと努めた。
「ここでおまえと会うのも最後になる。
強く美しい魂に出会えたことが私の救いになった。
誰もここに来ないのではないかと思っていたのだ。
ありがとう、ザオタル」
その瞬間に岩山がかき消えて、私は暗闇にひとり佇んでいた。
私はアムシャを失った。
アムシャは何も知らない私を導いてくれた頼れる存在だった。
その現実に寂しい気持ちは隠せなかったが、私は顔を上げた。
まだすべてが終わったわけではないのだ。
私はゆっくりと瞑想感覚から浮上していった。
そして岩山に座っている自分の身体に戻っていった。
この世界に戻っても、あの自分の感覚ははっきりとしていた。
これが自分だと断言できるくらいに明瞭で輝いている。
身体や心といえば、それに付き従う影のようだった。
いまなら自分はひとりしかいないというアムシャの言葉が理解できる。
私は存在であり、それは個人ではない。
存在であるということは、人間ですらない。
それでは存在とは何なのか。
存在を明確にしなければ、私はまだ宙に浮いている状態だった。
だが、答えはすでに握っているのだ。
それはつまり、自分が存在だと知っていることだ。
そのことが私の疑問を解き明かす鍵になっている。
そして私はそれを失うことはもうないと知っている。
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