神の声 第1章:天使と悪魔(6)
「でもあれだな、インターネットはいいアイディアだ」
「つながるということが良いヒントになる」
「つまりだ、神というのはつながることで」
「現れてくるもんじゃないかということだ」
「インターネットは世界でつながるもんだ」
「神というのはその裏側」
「つまり意識というところでつながることなんじゃないか」
「心の中の共通の概念というか」
「上手く説明できないが」
「そういう概念を人間たちに植え付ければ」
「オレたちの仕事も人間たちに認められる」
「インターネットを超えられる神の存在だよ」
「思いつきだが」
「オマエはどう思う」
天使は落ち着きを取り戻そうとしているようだ。
「意識って…、もしかしてこの洞窟のことか」
「ここのどこが神なんだ」
「確かにオレたちはここの存在を知ってるから」
「こうしてここでつながれるが」
「とてもこれが神とは思えないぜ」
「真っ暗で静かで動くものも何もない」
「インターネットの賑わいとは大違いじゃねえか」
「それにここのことは人間に知られたくないぜ」
「オレたちのこんな話が人間どもに筒抜けになったらどうする」
「ますます、オレたちの立場が危うくなるんじゃねえのか」
「あいつらは何も分かってねえとか」
「きっとネットで炎上するぜ」
「人間どもにそこまで知られたくねえよ」
悪魔は受け入れがたいような感じだ。
「まあ、オレが言いたいのは」
「オマエの言う通り、ここの開放ということだ、確かに」
「人間たちがここのことをどう感じるか」
「それはオレも分からない」
「だがな、インターネットだって」
「開放されて、それを人間が認めたから」
「ああして広まったんだろう」
「それなら、ここも開放すれば」
「人間たちはインターネットみたいに」
「ここを神のように思うかもしれない」
「ここを神だと思えばだな」
「オレたちにも役割があるってことだよ」
「それは人間たちがここを神だと思えるようにすることだよ」
「どうだ」
天使は悪魔の顔色をうかがった。
「そうだな、他に神はいねえんだから」
「ここを神に見立てるのはいいアイディアかもな」
「あまり訳が分からない方が好都合かもしれねえし」
「で、どうやってここを開放するんだ」
悪魔は少し話に乗ってきた。
「ああ、そうだな」
「ここは意識だから」
「瞑想することで入れるようにしたらどうだ」
「瞑想することで、ここにつながれるようにする」
「ある意味、ここは何というか神秘的だろう」
「オレたちがここにつながるカギとなる」
「つまり、オレたちが人間に瞑想を教えればいいんだ」
「瞑想をする人間たちは」
「この神秘的な場所を見つけて」
「ここを神だと思うだろう」
「瞑想すれば誰でも神につながれる」
「それこそインターネットみたいにな」
天使は得意気な顔をした。
「なるほど、そいつは良いアイディアかもしれねえな」
「あとは人間がここをどう感じるかだ」
「まあ、それは人間に任せるしかねえがな」
「だめなら、自滅させるまでよ」
「これが最後だ」
「そしたら、もう一度やり直して」
「オレたちの言う通りになるよう」
「今度こそしっかりと人間どもを調教しねえとな」
悪魔は腹をくくったようだ。
僕は困惑した。
これは夢のはず。
だけど、かなりリアルな肌触りのする話だ。
僕はいったどんな手違いでここに迷い込んだのか。
僕はあの天使と悪魔の話しを聞いてしまった。
神はいないと僕は知ってしまった。
もし、彼らが僕の存在に気がついたら、どうなるだろう。
僕は人間なんだ。
とても良いことが起こるとは思えない。
これは天使と悪魔の謀議なのだ。
僕は消されてしまうのか。
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