超人ザオタル(43)瞑想への失望

私がゆっくりと目を開けると、ふたりはまだ瞑想していた。

しばらくしてふたりも瞑想から覚めて目を開けた。

ふたりとも神妙な顔をしていた。

「今日の瞑想はどうだったかな」


私はその空気に何かの変化が起こっているのを感じた。

最初に口を開いたのはアルマティだった。

「実は、前のように瞑想が楽しくないのです、ザオタル。

いつも同じような体験の繰り返しで。


そこに私をはっと気づかせる何もなくなってしまいました。

このまま瞑想を続けていいのかさえ分からなくなって。

私は静けさよりも何かの体験が欲しいのです。

まえはこの静けさも体験でした。


はじめはそれも新鮮だったのです。

ただ何度か繰り返しているうちに色あせていくというか。

それに慣れてしまって、物足りなくなってきます。

静かなだけでいいのかと。


早く瞑想が終わることさえ望んでいます。

そんなことではいけないとは思っています。

でもそこに何もないのであれば、どうすればいいのか。

思考や夢が誘いに来れば、簡単に私はそれに惹かれてしまいます。


そうなることさえ何の抵抗もなくなりまっした。

どちらかというと、そんな静けさ以外のものに歓びを感じています。

もちろんそれでは瞑想する意味がないと分かっています。

私は道を失ってしまったのでしょうか」


アルマティは不安げで、罪悪感を持っているような顔だった。

タロマティが話が終わるのを待っていたかのように口を開いた。

「私もこの瞑想の静けさに飽きてきてしまいました、ザオタル。

そこでは何もすることがないのです。


私は何かすることで生きてきました。

この世界で生活することは何かをすることです。

何もしなければ、何も起こらず、そこで朽ち果てていくだけです。

それでは怠惰で無能力な恥知らずになってしまいます。


私はそうなることに我慢できません。

前のようにはっきりと道を歩くことの方がまだましでした。

そこには辛くても何かの体験があり、それさえ私を鼓舞する気づきになり得たのです。

静けさの中に落ちているだけでは、自分が停滞している気がします。


この瞑想が続くのであれば、私は見切りをつけなければなりません。

とても残念ですが」

タロマティは失望の色をありありと顔ににじませていた。

私は二人の話を聞いて、しばらく黙ったままでいた。


空風瞑想

空風瞑想は真我実現の瞑想法です。瞑想を実践する中で、いままで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そうして「私は誰か」の答えを見つけ、そこを自分の拠り所にするとき、新しい視点で人生を見つめることができるようになります。