超人ザオタル(38)それぞれの道

ザオタルを捨ててどうなる。

いままで道を歩んできたのはザオタル本人だったのだ。

道での苦悩も歓びもすべてザオタルに必要な体験だった。

それをいまここで捨てるのか。


道での体験がザオタルをつくりあげ、精神を成熟させたのだ。

この道の成果ともいうべきものを捨てるのか。

いや、もっと違う答えがあるはずだ。

これは間違いかもしれない。


自分はザオタルであり、ザオタルが道を極めるのだ。

私はそこで壁に道を阻まれてしまった。

何の動きも取れない。

消化できない理解のために気分が悪くなってきた。


私はもがきながら意識の中を浮上していった。

まるで溺れた人のように世界の空気を求めた。

徐々に身体の感覚がもどり、私は部屋の清廉な気を感じた。

ゆっくりと目を開けると、ふたりはまだ瞑想していた。


私は確かめるように自分の身体に触れてみた。

それは確かにザオタルだった。

ザオタルである確かさがここにある。

これを捨てることなどできるのだろうか。


ほどなくして、ふたりの身体が小さく動いて呼吸を始めた。

瞑想から覚めてきたようだ。

身体をほぐすように動かしてから、ふたりは同時に目を開けた。

ふたりとも星空のような美しい瞳をしていた。


私はその瞳を見つめて微笑んだ。

「さて、瞑想はどうだったかな」

私は自分の動揺をかくすように穏やかな口調でそう尋ねた。

アルマティが答えた。


「ええ、とても素晴らしいものでした、ザオタル。

いま何と言っていいかわかりません…。

何と言っていいか。

心の中にも道があって、そこをゆっくりと降りていきました。


そしてとても静かな場所に着きました。

とても心地よくて、ずっとそこにいたいと思える。

まるで生まれ故郷のような懐かしさもありました。

私はそこを知っているとも思いました。


はじめての場所ではないような。

もちろん、それは瞑想してはじめての感覚なのですが。

だから、とても不思議な感じがします。

いまはとても心が軽くなって、何か新鮮な気持ちがします」


タロマティが言った。

「私の瞑想も同じように静寂でした。

何の思考も浮かばず、数多くの心配事さえどこかに隠れているようで。

これが道なのかどうかは分かりません。


でも、確かに私はそこで何かを見つけなければならないと感じます。

いえ、いまだからそう言えるのかも。

そこにいるときは、それだけで満たされていました。

それ以上の何かなど必要ないと。


ああ、まだよく整理できません。

でも、瞑想は新しい扉を開いてくれる気がします。

私にはこれが必要でした、きっと。

ありがとう、ザオタル」


空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で今まで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そこを自分の拠り所にするとき、新しい人生が始まっていきます。