青の記憶(2)星の声
私は青(あお)と呼ばれている。
本当は名前などないのだけど。
でも、青と呼ばれることは嫌いじゃない。
私は普段、話しをすることはない。
話し相手もいないから。
黙ってここにいるだけ。
たまに星から声が聞こえる。
それは大きな怒鳴り声や小さなささやきだ。
それがいくつも混ざっていて騒がしい。
何を言っているか分からないから、
私はただそれを聞いている。
たまに「青」という声が聴こえる。
それが私のことだと分かる。
「青」と呼ばれていると分かる。
その声に応えるべきかどうか。
黙っていたほうが自分らしいから。
私はいつもそのままにしておいた。
そうしている間に星はグルグル回り続けた。
あるとき、星から「青」と大きな声で呼ばれたので、
つい「何でしょう」と応えてしまった。
そう応えると、星の騒がしい声は一斉に黙った。
まるですべての口が閉じたかのように静かになって、
それで私のどこかとつながった。
そして、星の言葉が私に届けられた。
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