超人ザオタル(34)終着地の疑惑

しばらくして、ふたりは就寝の挨拶をして部屋を出ていった。

夜も更けていた。

ひとりになった部屋には深い静けさだけが残った。

私は眠る気にもなれずに、椅子に座ったまま目を閉じた。


そのまま瞑想に入っていった。

意識の深くへと沈んでいき、静寂の世界とひとつになった。

私は確かにそこにいて、覚めた感覚をまとっていた。

その感覚は大きさとか時間とかで推し量れない。


それでも、意識を確かめれば、私はそこに在る。

ここが道の終着地なのだ。

だが、ここにいったい何があるのだろうか。

もし何もなければ、ここに意味はあるのだろうか。


いくら静寂を見つめても、何も起こらない。

ここから去ってしまえば、それで終わりになるだろう。

そして私は世界に終着地を見つけようとするかもしれない。

だがしかし、そこに終着地を見つけることなど出来ない。


だから、何かに夢中になり、それを終着地にしようとするのだ。

これいでいいのだと、きっとそれで自分を納得させようとする。

それはそれで理解できる話だと思う。

ここには終着地としての証となる何もないのだ。


そのとき、意識の中で何かが変わった。

世界の景色がぼんやりと姿を現した。

あの岩山だ。

私は岩山の上に座っていた。


夕暮れの光が草原を照らしていた。

優しい風が私を撫でていく。

何かの花の香りが運ばれて心地いい気持ちになる。

とても懐かしい感じがした。


となりに黙って誰かが座っている。

すぐに私はそれが誰だか分かって横を向いた。

そこにはアムシャがいた。

久しぶりにアムシャに会った。


「随分と草原の世界でのんびりしていたようだな、ザオタル」

アムシャはそう言って冷やかすように笑った。

「ええ、その通りです、アムシャ。

それも私の道だったのですよね。


草原の家で瞑想もせずに生きていくことさえ必要だった。

それでも、私はここに戻ってきましたよ」

私もそう言って少し恥ずかしそうに笑った。

アムシャに聞きたいことがたくさんあった。


だが、こうして並んで座っているだけで満ち足りていた。

質問などどうでもいい気がした。

「いや、質問は大事だよ、ザオタル。

いつでも疑問を持ち、それに取り組むのだ。

あそこに何もないということが理解できないのだろう。


それはとても大切な疑問だよ。

その疑問を持てなければ、あそこを去ったら最後、決して戻ることはない。

そうして多くの人々が道を失っていくのだ。

そこが終着地として間違いはない、だが何もなかった。


そう人は結論づけようとする。

そして、その体験を世界に持ち帰って、役に立たせようとする。

それは役に立つかもしれない。

心は落ち着きと平安を得て、世界の中で特別な存在になる。


あの世界に行ったことのある人間として、誇り高く生きるのだ。

だが、それではあの世界を完全に理解したことにはならない。

何しろあそこには何もないわけではないのだ。

それを見つけなければ、道はいつまでも完結しない」


空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で今まで気づかなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そこを自分の拠り所にするとき、新しい人生が始まっていきます。